サイホンを使う


□□ サイホンの意外なアドヴァンテージ □□

 サイホンを使ったコーヒーと言うと、濃厚でストロングな印象を持っていました。 しかし、ひたすら「早さ」を追求していく過程で、 濾過中に上から加圧して濾過を早める事ができないだろうかと考えたら、 なんとサイホンに行き着くのでした。
 サイホンは下のフラスコの中を水蒸気で満たし、 火を外すと減圧して上のロトの中のコーヒー液を一気に吸い降ろします。
 この特性を利用しない手はありません。「ボイル・ニイノ・リファレンス」にも 劣らぬコーヒーを既成の器具で得る事ができるのです。
 やり方は簡単。湯が上に上がって、フラスコ内が充分に蒸気で満ちてから、 おもむろに上のロトに粉を入れるのです。そしてさっとかき混ぜるやいなや、 フラスコを火から外して減圧を開始、ただちに抽出を完了するのです。

 15年以上前、浜松で就職した友人が、 甲府の僕の家で飲んだのときわめて近い印象のコーヒーを 飲ませる喫茶店を発見したと教えてくれ、機会を作って訊ねてみました。 「Zein(ザイン)」という名の店でした。
 成程、確かに彼の言う通り、その味は僕と同系のものでした。 しかし、カウンターに並んでいるのはサイホンばかり。 とすれば考えられる事はひとつ。 僕はカウンターに席を移してもう一杯注文しました。 案の定、マスターは上の手法とそっくり同じ方法を使っていました。 彼の知る限り、東京にもこの方法を使う店が3軒はあるとの事でした。
 数年後、友人の結婚式(「ボイル・ニイノ・リファレンス」にありついたうちの 一人)で再び浜松を訪れた際、無理を言ってみんなでザインに行きました。 残念ながら、オーナーの方針であんなに薄いコーヒーは出せなくなったそうで、 どこにでもあるありきたりのコーヒーが出て来ました。 でも、マスターにお願いしたら喜んで昔の味を出してくれました。 もし今でもマスターが変わっていなければ「昔の味で」の合言葉は有効な筈です。


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